組合設立の目的と経過

◎ 設立の目的 

 兵庫県川西市、猪名川町、大阪府豊能町、能勢町の1市3町が共同で新しいごみ処理施設を建設し、管理運営を行っていくことに平成10年合意し、その事業の実施主体として、平成12年8月11日に自治大臣(現総務大臣)の許可を得て、一部事組合(※)「猪名川上流広域ごみ処理施設組合」が設立されました。
 当組合の事業目的は、ごみ処理施設及びリサイクルプラザを建設し、適正に管理運営することにより、ごみ処理施設から排出される有害物質等による環境負荷を現状より低下させ、地域環境や地球環境改善に貢献するとともに、一般廃棄物の安定的かつ適正な処理及びリサイクルを行い、循環型社会の構築に寄与することです。

  組合構成市町位置図

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 組合規約はこちら(PDF)
 
 ※ 一部事務組合とは、地方自治法に定める広域行政制度の一つで、二つ以上の地方公共団体がその事務の一部を共同して処理するため、関係地方公共団体の議会の議決を経、さらに知事もしくは総務大臣の許可により設けられる特別地方公共団体です。



◎ 広域化処理に至った経過

 広域化に合意するまで、この地域のごみ処理は、川西市と猪名川町はそれぞれ単独で、豊能町と能勢町は2町共同で処理施設を持ち、行われていました。川西市では、昭和53年稼働で1日焼却処理能力75tの南部処理センターと昭和59年稼働で150tの北部処理センターの2つの施設で、猪名川町では昭和62年稼働で1日焼却処理能力30tの猪名川町クリーンセンターで、そして豊能町及び能勢町では昭和63年稼働で能勢町内に所在する1日焼却処理能力53tの豊能郡美化センターで、それぞれ焼却処理を中心としてごみの中間処理を行い、最終処分は大阪湾のフェニックス計画処分地に埋め立てていました。つまり、当該地域には4つの焼却施設があり、その合計の1日焼却処理能力は308tでありました。
 そして、施設の稼働年の違いにより更新時期が異なることから、処理施設の更新についての検討は、基本的には個別での建設を前提に進んでいたところです。特に、その当時、稼働から19年を経過する南部処理センターがあり、さらに北部処理センターも稼働から13年となる川西市では、新処理施設の建設が差し迫った課題となっており、平成8年11月には川西市単独で処理することとした「新処理センター建設基本構想」の発表も行っていたところです。
 この平成8年当時は、全国的にごみ焼却施設からのダイオキシン類排出の問題が大きな社会問題となっていました。このため、旧厚生省は一般廃棄物焼却施設の排出ガス中のダイオキシン類調査を全国に求め、その調査結果を基に平成9年1月に「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を発表しました。この中で、ダイオキシン類を多く排出する施設が平成4年度以前に建設された古い施設(旧ガイドライン非適用の施設)であるとともに、毎日炉の立ち上げ、立ち下げをする准連続炉や機械化バッチ炉であったことから、ダイオキシン類を削減するための方策の一つとして、燃焼の安定化のため24時間連続で運転する全連続炉での処理を行うこと、そして発生ごみ量が少なく全連続化が困難である場合には、隣接市町村が連携して、一定規模以上、この規模は効率性、経済性から300t程度以上が望ましいとされ、最低でも100t以上とすべきとされました。そして、こうした規模に集約化(広域化)を総合的、計画的に推進する必要があるとされ、この広域化の方針を徹底させるため、平成9年5月旧厚生省から各都道府県に対し、広域化計画を策定するよう通知がなされました。こうして、ごみ焼却施設の広域化は大きな国の方針となったところです。
 こうした国の広域化方針により、猪名川町においては、処理施設の更新について時期的に余裕はあったものの、広域化がなされない場合には100tの規模にならないことから、次の更新についてはRDF(=ごみ固形化燃料)施設等の廃棄物再利用施設による整備とならざるを得ない状況でした。
 一方、豊能町と能勢町の豊能郡美化センターにおいては、排ガス中のダイオキシン調査の結果、排ガスに高濃度のダイオキシンが含まれていることが確認され平成9年6月休炉となり、その後の環境調査において高濃度の土壌汚染が明らかになりました。特に、平成10年4月に2回目の環境調査の結果、法面土壌から過去例を見ない最高8500ピコグラムを検出したことから、単に能勢町だけでなく、猪名川水系全体地域に大きな不安が広がりました。このことにより、あらためて環境問題を考える場合、人間が決めた行政区という範囲で考えるのでなく、環境を共有する地域全体からの視点で考えていかなければならないと多くの人が感じたことと思います
 こうした国のごみ処理施設広域化の方針やこの地域で起こった土壌汚染問題など、ダイオキシンをめぐる問題の解決策として、当該地域共同でごみの中間処理を行う方向性は、望ましい選択肢であると考えられました。しかし、ごみ処理施設の広域化については、施設建設地を何処にするかといったことを始めとして、解決しなければならない多くの問題があることも事実です。環境のために望ましい選択肢であっても、なかなかその方向に進まないというのが全国の実態であると思います。
 当該1市3町においては、環境を共有する地理的背景のもと、ダイオキシン問題が大きく報道され、それに対する危機感が存在したことから、政策判断により広域化合意が図られたところです。



◎ 広域化合意以後の経過

 合意以後の事業推進については、一部事務組合が設立されるまでの間、川西市が中心となり、主に次の3つの取り組みを行ってきました。(川西市のページはこちら)

 (1) 猪名川上流1市3町広域ごみ処理施設建設連絡協議会
 一部事務組合が設立までの間、1市3町行政間における事業推進の母体として、各首長及び助役を委員とする「猪名川上流1市3町広域ごみ処理施設建設連絡協議会」を設置しました。この協議会の所掌事務は、当該事業の事業実施主体の設置に関すること、施設建設のための調査に関すること、そしてごみ処理広域化に係る市町間の調整に関することであり、下部組織である担当者連絡会も含め一部事務組合が設立された平成12年8月11日まで活動しました。

 (2) 猪名川上流1市3町広域ごみ処理施設整備検討委員会
 住民にとって望ましいごみ処理施設とはどのような施設なのかを明らかにするために、学識者3名と住民代表20名で構成される「猪名川上流1市3町広域ごみ処理施設整備検討委員会」を設置しました。
 この検討委員会は、・・・ごみ処理は都市としての基本的な機能であり1日も欠かすことができないものですが、その処理をする施設については、いわゆる「迷惑施設」とされており、住民にとって自ら居住する近くにはあってほしくないとの思いが強いのが実情であると考えられます。しかし、全ての住民が近くにあってほしくないとするならば何処にも施設は建てられず、結局ごみ処理はできないと言う事態になってしまいます。そこで、視点を変えて、逆に住民にとって「近くにあってもかまわない」と思えるようなごみ処理施設とはどのような施設かを、単にごみ処理施設だけでなく、その余熱を利用した付帯施設やその景観などについても夢が溢れるようなものを住民の皆さんで考え、そのイメージを明らかにしてもらいたい・・・との考えから設置したものであります。そのため委員に、大学生や高校生の参加も図りました。
 この検討委員会は、平成11年の2月から9月までの間12回の委員会を開催し、10月に最終報告書(PDF)を提出し解散いたしました。この報告書(PDF)は、特に安全と言うことに力点を置かれ、排出基準を諸外国の基準なども踏まえ設定されました。

(3) 建設予定地の選定
 当該事業の建設予定地については、川西市の国崎小路地区と決定しております。地理的には、一庫ダムからダム湖の東岸側を約3km北上した地点で、川西市の最北部であるとともに3町との市町境とも直近のところです。

    建設予定地

 (建設予定地の拡大位置図、写真はこちら

 広域化において一番問題になるのは、どの市町に施設を建てるかと言うことですが、当該事業においては処理ごみの大部分を排出し、現行施設の耐用年数から施設建設の計画がある川西市域において選定する事が合理的であることから、第1義的にはまず川西市内で候補地を探すこととしておりました。こうしたことから、川西市が主体となってこの候補地選定を進めたところです。この作業についてはまず、建設候補地を選定するための判断要素5項目を決めました。その項目とは
 1 500m以内に人家が全くないか非常に少ないこと。さらに1km以内に相当規模の集落・住宅団地がない場所であること。
 2 国道、主要地方道から集落を通過せずに直接進入できる道路が確保できること。
 3 地権者が多数で用地買収が困難であるなど予想される問題点がないこと。
 4 都市計画上、将来明らかな支障が生じないこと。
 5 1市3町のごみを搬入するのに搬送距離がなるべく短くなること。
の5項目で、都市計画決定におけるごみ焼却施設の立地に関し、旧建設省から示されている一般基準を参考とし、より強化する形で作成しました。
 この判断要素の基本的なスタンスは、有効敷地面積や進入路の確保等を前提としながら、できるだけ人家から一定の距離を保って施設を建設しようとするものです。もちろん、排出されるガスなどが人の健康に害を及ぼす施設ではありません。ですから、面積の確保等前提条件がそろえば何処にでも建設することは可能な施設ですが、現実の問題として、住民の感情として近くにあってほしくないとの思いが強く、さらには、いくら環境にとってよりよい選択であるとしても他地域のごみも処理する広域化について、心情的にはなかなか割り切れないものがあると考え、こうしたスタンスを取ったものです。
 そして、この判断要素を基に候補地の絞り込みを行い、当該土地の中心から直近の人家が約600m、また直近の集落までが約1200mを保て、さらにその他の条件においても優れている国崎小路地区を予定地として、行政の責任において決定し、平成11年3月に発表しました。